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リビング再考〜個を大切にしながら家族が集える共有スペースに〜〈5〉
設計士の山田さんは、
できあがったデザインやスタイルから内装を決めてしまわない方がいいと言います。
では何が重要で、どこから考え始めればいいのでしょうか?
それは「肌の触れるところ、体の当たるところ」という意外な答えでした。


選択の基準は、体に優しいモノ。

――「重視すべきは、体の当たるところ、ですか…」
山田「例えば椅子、座り心地のいい椅子って、ホントに快適でリラックスできるでしょう。ソファもベッドもしかり。素直に気持ちいいと感じられるものを選ぶことって、長く住まうために大切です」



――「いい家具をそろえなさいと」
山田「体に優しいものを選ぶ、ということですね。それが予算配分の選択基準です。全部が全部いいものを、しかも一度にそろえれられたら理想でしょうけど、現実はそうはいかないですよね。だったら壁紙に凝るよりも、床材にお金をかけた方がいい。なぜなら床はいつも足が触れていますよね。合板と無垢では感触が全然違います」



――「(サンプルを触って)ホントですね、手で触れるだけでも違いがわかります。無垢の木のほうが断然気持ちいい。肌への当たりが柔らかいというか温かいというか……」
山田「無垢の床にされたお客様のほとんどが、スリッパをはくのがもったいない、っておっしゃいますね」
――「へえ〜、そんなに違うんですね」
山田「それとテーブルの天板。材質に加えてエッジのデザインも重要ですよ。まず空間の印象がずいぶん違うし、手をついたときの感触も違う」



カウンターなど、作りつけで作ってもらうときは、材質や色に加えてエッジのデザインにも注意して。


――「シャープに角が立ってるか、ぽってり丸い仕上げかで雰囲気が全然違いますね。それに厚みも。テーブルって存在感が大きいですものね。そういう意味ではドアもそうかな?」
山田「そうですね、毎日、開け閉めするたびに向き合うものですしね。シンプルなデザインでも材質がいいと、空間のグレードがかなりアップします。そういう風に体に触れる部分にお金をかけた方がいい」
――「ということは、全体的にはどちらかというと家具重視?」
山田「家の中に関しては、そうですね。床やドアは最初に決めないといけませんが、内装は極力シンプルにして、気に入った家具を一つずつじっくり選ぶよう、アドバイスを求められたらそうお答えしています。作りつけ家具にお金をかけるよりもそのほうがずっといいと思います。好きな椅子をデザイン違いで集めるのも面白いですよ。
 そういうことができるのも、内装がシンプルであればこそなんです。家はこれから何十年間も毎日過ごす場所。最初からデザインされたもので作り上げてしまうと、飽きるのも早いと思います」
――「自分で長い時間をかけて作ったものって、愛着わきますものね。手芸とかクラフトとか、料理でも。おいしいお漬物ができたらそのぬか床をもっと手をかけて大事にしようという気持ちになるし……」
山田「そうですか。確かに住まいも日々手をかけてやれば、ぐんと快適になりますね。
 素材やものの話題から少しそれますが、住み心地という点でよく収納のご相談をいただきます。容量が大きければいいかというと、決してそれだけではない。生活ってどんどん動いて新しくなってゆくものでしょ。新しいことをしたら、新しい物が増えてゆくのは当然です。だから自分が動いた分だけ、物も動かしていかないと、溜め込むばかりではきりがない。片づかない家になって当然です」
――「う……十分、思い当たります……」



山田「そのためにも、最初の間取りが大切なんです。無駄のない広さ、つまりある程度将来をふまえてその大きさの意味を考えることは重要です。必要な収納スペース、物の増え方、処分できる時期も。そして次は素材の質やディテール。体にとって心地いいかどうかを基準に選択します。そうやって考えてゆけば、自ずとシンプルな内装になるはずです」
――「で、好きな家具をそろえてゆけば、いつしか自分たちのスタイルができてくる……。手をかけやすい間取りとニュートラルな内装、これってまさに、家づくりが人生の一つの起点となる考え方ですね」〈了〉
(ワダ)

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09/11 11:00 | 山田雄一の空想空間
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