親世帯と子世帯とのコミュニケーションにはまだまだ距離がある――そんな関係だからこそ、玄関と中庭が共有になった上下分離型を提案。
中庭は、1階に住む両親と2階で暮らすお嫁さんとの間を取り持つ効果と、家の中を快適に保つ仕掛けがあるのだそうです。庭の様子が共通の話題に。森濱「庭作りは住む人の好みですが、例えばこの家なら、藤棚を作って下にテラスを設けたり、外庭には桜など広葉樹を植えるのをおすすめしますね。そしてそれらが2階からも様子がよく見えるようにしておくのです」
――「花が咲いたり、葉っぱが色づいたり、四季の変化が間を取り持つということですか」森濱「そうです。きれいな花が咲くと誰だって気持ちが華やぐし、春の新緑、夏の青葉、秋には紅葉と、樹木の変化も風情あるものですよね。自然と家族の話題になってゆくのではないでしょうか」
――「世代を超えた共通の話題ですね」
風を起こして涼を取り込み、熱を蓄えて暖を保つ「涼温房」。森濱「それともう一つ。アトリエも収納スペースも必要という制約がありながら、わざわざ中庭を設けたもう一つの理由は、『涼温房』効果をもたらすためです」
――「『涼温房』?」森濱「そうです。住友林業では強制的な冷暖房になるべく頼らず自然の恵みを利用して、夏に涼しさを、冬には温かさを作りだす住まい造りを研究しています。暑さも寒さも解消するのではなく、『和らげる』という発想で対処する暮らし方です」
――「日本の伝統的な木造家屋がそうですね」森濱「そのため設計時には現地で空気の流れを観察し、気象データを分析します。また、庭造りも涼温房効果の重要な要素で、先に述べた藤棚もそうですし、落葉樹をよくおすすめするのも夏は自然の遮光効果をもたらし、冬には葉が落ちて日差しを室内に取り入れられるという理由からです」
――「なるほど〜、プロの方が進められるものには、やはり理由がきちんとあるのですね。ところで開放感という点でちょっと気になったのが、中庭を囲うこの2部屋ですが……」森濱「1階のリビングを挟んだ和室と寝室ですね。ここも涼と日差しを取り込めるようにします」
――「そう、中庭が見えるということは、和室と寝室がお互い丸見えになるのかなぁと。この和室は客間としても使えるようにとのことでしたよね」森濱「リビングは中庭と一体化するような開放感を重視しますが、この2室は独立感のあるように作りますよ」
――「う〜ん、せっかく中庭が見えるのに、それもなんだかもったいない」森濱「いえいえ、窓に高低差をつけるのですよ。そうすればお互い視線が交わることなく庭の風を楽しめます」
(ワダ)
……次回へ続きます