シアタールームもキッチンもオーダー通り。
でも、これって、家族がバラバラにならないの?
おせっかいながら、そんな心配が頭をよぎった私(ミヤ)。
でも、大丈夫。川瀬さんのアイデアで、すっきり解消、さすが!なアイデアに感動しました。開く、閉じる。メリハリが大事!――「実は、ちょっと気になることがあるんです。ご夫妻の希望は100%叶えたけれど、こんなに個人の希望が叶った家に住んだら、自分の世界にひたりきってしまうんじゃないかなって。ひょっとして、一家離散?なんてことになったら、どうしよう?と心配です」川瀬「そうですね。ご主人は、休日、シアタールームに閉じこもることになるかもしれません。奥様はキッチンで料理をすることだけに楽しみを見いだすかもしれません。それじゃぁ、家族としてのまとまりがないですよね。そこで、考えたんです」
――「何を?どうするんですか?」川瀬「キッチンから続くリビングもAVシアター仕様にしました。家族で映画を楽しめるようにしたんです」
――「あぁ、それはいいアイデアですね。ひとりでしみじみと味わいたい作品もあれば、家族でアレコレ言いながら楽しみたいなぁという映画もあるから。ご主人おすすめのファミリー映画を、みんなで見ながら、奥様が焼いたピザやクッキーを食べる、なんてすごく心あたたまる光景!でも、AV仕様ってどんな風に?」川瀬「リビングから2階への階段の一角に踊り場を作り、そこにプロジェクターを置いて、リビングの壁をスクリーンに仕立てました」
――「映画を見たい時は、家族専用映画館になるってわけですね」川瀬「そうです。家族って、毎日一緒に過ごすものでしょ、特に大きな出来事がなくても。家でのなにげない過ごし方から、家族の個性やまとまりは生まれて、育まれるんだと思うんです。もちろん、自分ひとりの趣味に没頭するのも必要なことです、人生を充実させるためには」
――「でも、それだけじゃ、家族がいなくてもいい。家族がいるのなら、お互いを気にかける、ともに過ごす空間も大切、ですよね?」川瀬「ええ。だから、今回は、家族のための開かれた空間と、自分のための閉ざされた空間を提案しました。家族ひとりひとりが持つ世界を充足させるスペースを追求しつつ、家族全員の世界を深めて欲しい。施主さんならではのご家族像を形づくる助けになれば、うれしいですね。例えば、数年経っても家族みんなで楽しく過ごしています、と言われると、建築家冥利です」〈了〉
(ミヤ)