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間取りに考慮すべきは、夫と妻の、家の居心地に求めるものの違い。
男性は<こもり感>を、女性は<見通し感>を 重視する傾向にある、と、奥村さんはいいます。 けれど、見通しの良さと集中しやすい個室空間は、正反対の要望。 これを間取りで工夫して、見事に両立させています。 こもっても、広がりのある視界。見通しの良い家。 奥村「もう少し、見通し感についてお話しましょう。具体的に見て頂きましょうか。まずキッチンの流し台に立って玄関ホールの方を見るとこんな様子です」 ![]() ↑キッチンの流し台から玄関ホールを見た様子。真ん中にダイニングテーブルがあり、その奥が玄関ホール。 左側の扉を開けると、玄関のたたきまで見える。右手には2階への階段、その奥は和室。 ――「この画面の左側がリビングですね。相手が1階にいるか、2階にいるか、来客があったのか、夫、妻とも分かりますね」 奥村「さっきの視点を玄関ホール側から撮ったものがこちらです」 ![]() ↑ダイニングテーブル側から見たキッチン。後ろはキッチンの収納。 コンロの前には耐熱ガラスのついたてがある。 ――「このロケーション、オフィスならボスの机って感じですね。統括部長はフロア全体を見晴らせる位置に座ってるものでしょう(笑)。そう、アイランド型キッチンの良いところが十分に発揮されていますよね。料理しながらコミュニケーションも取れる。けど、妻も時には勉強とか書き物とか、こもりたいこともあるんですけど」 奥村「それはもちろんそうでしょう。間取り図を見てください。キッチンの横にデスクを作りました」 ――「キッチンの横……なんだか落ち着かないかも……。こう、勉強中のテキストとか辞書を置いて、パソコンや手芸にしたって道具や資料をきちんと収納できて。妻だって書斎は欲しいと思うんですが……」 奥村「ちゃんと集中できる工夫はしてますよ。こちらの写真を見てください」 ![]() ↑キッチンから見た主婦のデスクスペース。書棚も設えた本格的な作り。 視界は庭に向かって広がっているので、個室感がある。 ――「なるほど、キッチンやダイニングは視界に入りませんね。囲われているから個室感があります」 奥村「そして、目の前には窓を設けました。これがポイントです。個室感がありながら、開放感があるでしょう。しかも庭を見ているので、窓の外にグリーンを植えればかなり良いスペースだと思いますよ」 ――「この本棚もこの写真では飾り棚みたいになってますけど、もう少し広めの板を使うとか、本棚らしく横板も張るとかすればたくさん収納できそう」 ![]() ↑妻のデスクスペース左の壁部分。 奥村「そうですね。天井まで使えばなかなか使える容量になりますよ」 ――「そういえば、収納スペースが間取り図にも写真にも、これといって見当たらないのですけど。キッチンキャビネットぐらいで」 奥村「収納はですね、収納する物の使う場所の近くに作るというのが、基本的な考えです」 (ワダ) ……次回へ続きます ![]() 働き系とくつろぎ系――。
違う行為をする二人が同じ空間で過ごすには、 約3.3mの距離が必要という調査結果が出ました。 それをより有効に生かし、心豊かな空間にするのが、間取り。 奥村さんは間取りの好みにも男性と女性の差があると言います。 家の中でも行動特性?「こもりたい夫、見通したい妻」 ――「間取りの取り方にも男性と女性で好みの差があるとは……言われてみればなるほど、納得できます」 奥村「間取りがというより動線計画――動き方です。基本は、夫の居場所が妻の家事動線の外にあることですね」 ――「確かに、リビングに置いたキャビネットに、食卓まわりのモノを収納すると、食事のたびに忙しいですね」 奥村「この間取り図を見て下さい。赤い人物が妻でキッチンにいます。この赤い点線が家事動線です」 (↓クリックで拡大します) ![]() 敷地183平方m(55.4坪)、 1階面積64.55平方m(19.5坪)2階建て建物延面積109.86平方m(33.2坪) 奥村「キッチンを中心に、洗濯などの水廻り、勝手口、ダイニング、2階への階段、玄関ホール、和室へダイレクトに行けます。リビングにいる夫には全く影響ないでしょう」 ――「このリビング、別室のように仕切られてますね」 奥村「そうです。でも部屋じゃない。ソファとキャビネットで仕切ってるだけなので、立てば目線から上は開いています。物音や気配は十分にわかるんです」 ![]() ↑ダイニングスペースの方からリビングを見た様子。 画面中央のテレビキャビネットが間仕切りになって、その向こうがリビングスペース。 ![]() ↑リビングの入り口から奥をみた様子。 左側がキッチン&ダイニングスペースと隔てるキャビネット。 ――「ふ〜ん、なるほど〜、このリビングのソファに座っているとお互い視界に入らない。思いっきりテレビに集中できますね」 奥村「そうです、男性の居場所を考えるとき、〈こもり感〉は大事なんですよ。男性って概してこもれる場所が好きな傾向にあるもんで……」 ――「子ども時代の秘密基地に端を発しているんじゃないでしょうか(笑)押し入れや物置きの一角に隠れ場所を作ったり。大人になっても書斎的スペースをわざわざ屋根裏やロフトに設けたりする方、いますよね。確かに、こもると集中できるから落ち着くのでしょう。けど女性は、主婦は、家でこもっていられない。すべきことがたくさんあります」 奥村「ですので反対に女性にとって、間取りに大事なのは〈見通し感〉です」 ――「見通し……そうですね!料理をするからといって、キッチンにこもりっぱなしじゃないですし。テーブルを整えながら、洗濯をしながら、ときにはお客さんのお相手をしながら、と、多分多くの女性は家事をするとき、絶えず別のコトにいつでもかかれる心構えが習い性になっていると思いますね。だから家中の様子を把握しておきたい」 奥村「家事は作業ですからね。その動線を妨げるものがあるととても効率が悪いわけで。動きやすいということは、見通しもいいということなんです」 ――「作業している者の動きを妨げないためにも、くつろいでる人はリビングにこもっていてもらう……。けれど、この間取りは本当に別室にこもるんじゃないところがポイントですね。こもるのではなく、こもる感覚」 奥村「そうです。それぞれが自分の作業に集中しつつ、お互いの気配が感じられるようにと」 (ワダ) ……次回へ続きます ![]() 同じ空間にいるふたりがそれぞれ違うことをするには、なにかと気遣いのいるもの。
けれど、奥村さんはその気遣いも、距離と間取りで解決できると言います。 家族間での快適な距離についてアンケート結果を見せてもらいました。 違うことをするふたりに「3mの思いやり」 奥村「この図を見て下さい。これは家の中で家族と過ごすのに、どのくらい距離が快適か不快かを我が社でアンケート調査した結果です」 ![]() 奥村「いっしょに同じテレビを観るときは約1.6m、これをくつろぎ系の行為と言っています。こちらの真ん中が働き系の行為です。パソコンとか勉強とか手紙を書くとか、二人でデスクワークするときですね。これは約1.2mぐらいの距離を確保できればいいようです」 ――「ダイニングテーブルで対角に座るぐらいの距離ですね」 ![]() 奥村「そして、一人はくつろぎたいけど、片方は作業をしたいというときは3.3m。くつろぎ系行為と働き系行為の人が共に過ごすには、最低これだけの距離が必要というわけです」 ――「くつろぐって、受け身な行為ですよね。テレビは何も考えずリラックスして観られるけど、eメールや手紙を書いたり、本を読んだりってやはりアタマが動いてなきゃできないことです。もし、自分が働き系の状態――マニュアルを読みながらホームページを作っているとか、資格試験の勉強をしているときとかに、その横で、テレビを観ている人がいたら、それがたとえヘッドホンを使って静かにしてくれていてもなんとなく落ち着きませんね。なんでだろう?視界に入るからなのかな。心の状態の違いを感じてるのかな?」 奥村「心の状態の違いを感じるというのはあると思いますよ。だから私たちも〈くつろぎ系〉と〈働き系〉といって動作や行為を区別していますし」 ――「家族だからよけいに感じるのかも。思いやりといっても、毎日毎日では実際しんどいですね」 奥村「というわけで、くつろぎ系のリビングスペースと働き系のダイニングスペースは、最低3.3mの距離をとって間取りを考えます」 ――「なるほど。一般的にリビングはおもてなしの場としても使われるし、ダイニングはキッチンといっしょになったプライベートな空間だから奥まったところに作られるし、まあ、そう考えれば3.3mは普通に……」 奥村「そうなんですけど、〈つかず離れず〉なんですよ、このテーマは」 ――「ああ、片方が奥に引っ込んではダメなんでした。一人でいる気ままさと、ふたりで過ごす安心感の両立」 奥村「そこで出てくるのが、間取りについてです。居場所を考えるとき、一般的に男性、女性の特性の違いが浮上してきます」 ――「間取りの好みが、男性と女性で違うってことでしょうか?ああ、今まで考えたことなかったけど、やっぱりそこにも差があるんですね〜!」 (ワダ) ……次回へ続きます ![]() 映画を観たり、自分の友達を招いておしゃべりしたり、
資格試験の勉強をしたり、趣味の作業に没頭したり……。 家でしたいことはたくさんあるけれど、 いっしょに暮らすパートナーには気を遣うもの。 互いに尊重しあうふたりだからこその思いやりですね。 <つかずはなれず>というあいまいな距離感を、 きちんと科学的な目で整理したら、 限られた面積でもプライベート感の高い間取りができました。 今回の提案は、旭化成ホームズ株式会社奈良支店奈良営業所で設計にたずさわってらっしゃる奥村一生さんです。 ![]() 〈奥村一生〉 1977年生まれ、静岡県出身。 関西大学大学院工学研究科建築学専攻を卒業。 2003年、全国社内コンペで新人賞、2005年には優秀賞を受賞。 趣味は旅行。 興味のある近代建築や美術館を訪れて、近くの温泉を楽しむというのが定番。最近印象深かったのは金沢21世紀美術館。 「ガラスで構成された広く開放的な作り、そして作品を観る人の主観にゆだねられるデザインに感銘しました。」 つかずはなれずプランニング ――「今回、ご提案いただいたテーマが〈つかずはなれずプランニング〉とありますが……」 奥村「そうです。そばにいてるけどじゃましない存在であるための空間プランニング、ということですね」 ――「なるほど、一人でいるのは淋しいけれど、楽しみにしていた映画やドラマに熱中しているときに横でパタパタ歩かれたり、反対に勉強や仕事をしてるときにテレビを突然つけられると、一人にさせて!って心の中で叫んでるってこと、ありますね」 奥村「例えばご主人はリアルタイムでスポーツ中継を観たいけど、同じ時間帯に奥さんはお友達を招きたい、そんなとき、互いに気兼ねせずリビングやダイニングでいっしょにくつろげたらいいな、と。実際そんなご相談もあります」 ――「で、今回は夫婦ふたり家族を想定されての提案なんですね」 奥村「調査によると1980年代は4人家族が主流だったのが、最近は1人とか2人の世帯が増えてきているらしいのです。2010年までに60代夫婦だけの世帯は35万世帯も増加し、反対に50代夫婦と子どもの世帯は70万世帯も減ってしまう、というデータもあります」 ――「2人世帯が今後増えるであろうというわけですね。子どもが自立したから、自分の時間を確保して家で過ごす時間を充実させたいと。一人暮らしの自由さと二人で暮らす安らぎの、良い部分だけを叶えられる家なんですね。 んー、でもそれって、どちらかが引っ込む場所、書斎なんかがあれば……」 奥村「いえいえ、引っ込む、ではなくてですね、遠慮とかガマンとか気遣いせずに、自然にそれぞれがいたい場所でしたいことをできる、という日常でないと。家なんですから。それに、多分誰にとってもリビングかダイニングっていちばん居やすい場所でしょう」 ――「そうですね〜、いつもいる場所で本を読んだりパソコンしたり、テレビみながら顔のお手入れとかしたいし」 奥村「ということで二人は<つかずはなれず>なんですよ。同じ空間にいながら、お互いを邪魔しない間取りです」 ――「そういうことって、思いやりとか我慢とか、心の在りようの問題としか考えてなかったですね。でなければ広〜い家にでも住まなくちゃ解決しないと」 奥村「我が社で、家の中で快適であると感じる距離のアンケート調査を行ったんです」 ――「へえ〜、他人と快適に過ごすための距離の話しは聞きますが、家族でというのは初めてです」 (ワダ) ……次回へ続きます ![]() |
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