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設計士の山田さんは、
できあがったデザインやスタイルから内装を決めてしまわない方がいいと言います。 では何が重要で、どこから考え始めればいいのでしょうか? それは「肌の触れるところ、体の当たるところ」という意外な答えでした。 選択の基準は、体に優しいモノ。 ――「重視すべきは、体の当たるところ、ですか…」 山田「例えば椅子、座り心地のいい椅子って、ホントに快適でリラックスできるでしょう。ソファもベッドもしかり。素直に気持ちいいと感じられるものを選ぶことって、長く住まうために大切です」 ![]() ――「いい家具をそろえなさいと」 山田「体に優しいものを選ぶ、ということですね。それが予算配分の選択基準です。全部が全部いいものを、しかも一度にそろえれられたら理想でしょうけど、現実はそうはいかないですよね。だったら壁紙に凝るよりも、床材にお金をかけた方がいい。なぜなら床はいつも足が触れていますよね。合板と無垢では感触が全然違います」 ![]() ――「(サンプルを触って)ホントですね、手で触れるだけでも違いがわかります。無垢の木のほうが断然気持ちいい。肌への当たりが柔らかいというか温かいというか……」 山田「無垢の床にされたお客様のほとんどが、スリッパをはくのがもったいない、っておっしゃいますね」 ――「へえ〜、そんなに違うんですね」 山田「それとテーブルの天板。材質に加えてエッジのデザインも重要ですよ。まず空間の印象がずいぶん違うし、手をついたときの感触も違う」 ![]() カウンターなど、作りつけで作ってもらうときは、材質や色に加えてエッジのデザインにも注意して。 ――「シャープに角が立ってるか、ぽってり丸い仕上げかで雰囲気が全然違いますね。それに厚みも。テーブルって存在感が大きいですものね。そういう意味ではドアもそうかな?」 山田「そうですね、毎日、開け閉めするたびに向き合うものですしね。シンプルなデザインでも材質がいいと、空間のグレードがかなりアップします。そういう風に体に触れる部分にお金をかけた方がいい」 ――「ということは、全体的にはどちらかというと家具重視?」 山田「家の中に関しては、そうですね。床やドアは最初に決めないといけませんが、内装は極力シンプルにして、気に入った家具を一つずつじっくり選ぶよう、アドバイスを求められたらそうお答えしています。作りつけ家具にお金をかけるよりもそのほうがずっといいと思います。好きな椅子をデザイン違いで集めるのも面白いですよ。 そういうことができるのも、内装がシンプルであればこそなんです。家はこれから何十年間も毎日過ごす場所。最初からデザインされたもので作り上げてしまうと、飽きるのも早いと思います」 ――「自分で長い時間をかけて作ったものって、愛着わきますものね。手芸とかクラフトとか、料理でも。おいしいお漬物ができたらそのぬか床をもっと手をかけて大事にしようという気持ちになるし……」 山田「そうですか。確かに住まいも日々手をかけてやれば、ぐんと快適になりますね。 素材やものの話題から少しそれますが、住み心地という点でよく収納のご相談をいただきます。容量が大きければいいかというと、決してそれだけではない。生活ってどんどん動いて新しくなってゆくものでしょ。新しいことをしたら、新しい物が増えてゆくのは当然です。だから自分が動いた分だけ、物も動かしていかないと、溜め込むばかりではきりがない。片づかない家になって当然です」 ――「う……十分、思い当たります……」 ![]() 山田「そのためにも、最初の間取りが大切なんです。無駄のない広さ、つまりある程度将来をふまえてその大きさの意味を考えることは重要です。必要な収納スペース、物の増え方、処分できる時期も。そして次は素材の質やディテール。体にとって心地いいかどうかを基準に選択します。そうやって考えてゆけば、自ずとシンプルな内装になるはずです」 ――「で、好きな家具をそろえてゆけば、いつしか自分たちのスタイルができてくる……。手をかけやすい間取りとニュートラルな内装、これってまさに、家づくりが人生の一つの起点となる考え方ですね」〈了〉 (ワダ) ![]()
09/11 11:00 | 山田雄一の空想空間 憧れだけで思いを募らせて作っては、
家は長持ちしない、という山田さん。 わたしらしさとか、自分に合うものって 案外、自分自身ではわかっていないのかもしれません。 いよいよ山田さんの家づくりについての考え方を伺います。 愛着わく家づくりって? ![]() ――「『〜したい』という気持ちで作っても、家は長持ちしない?」 山田「意味がないと飽きてしまうんですよ」 ――「なんだかちょっと哲学的というか論理的というか……」 山田「いえいえ、そんな難しいことではなく。『〜風の家にしたい!』と思って建てますよね。けど結局、見た目優先にしたら飽きてしまうんですよ。憧れが大きいと気持ちも高揚して壁紙とかドアとか、電気のスイッチまでこだわって選んでしまう。ところが毎日、何年も見てるといつしかそんな思いもトーンダウンしてくる。そうなったとき、そのモノが活かされなくなってしまうんです」 ――「そして、テイストの合わない家具なんかをふらっと買ってしまったりして後悔する……」 山田「そんなこともありえそうですね。家は長く使うもの、そして体と心を休める場所です。暮らすほど愛着がわく家にしないと。」 ――「愛着わく家……」 ![]() 山田「間取りにしても同じで、ここは8畳分はとっておきたい、といっても、その8畳という広さにどれだけの意味があるのか。後々、もし部屋の一角が、物が積まれっぱなしになってしまってたらうんざりでしょ。その分の広さをその物があるべき場所に使った方がいい」 ――「憧れよりも意味が大切、なんて聞くと難しそうに思ってしまいますが、お話を伺っていると、体全体で感じるもの、それも時間の経過による心の変化もイメージされてるのですから、とっても情感があるというかむしろ感覚的なものを大切にされているわけですよね」 山田「意味と感覚、遠いようで近いものかな。もちろん、お客さまには憧れや希望をどんどん発言して頂いた方がいいですよ。でないと話しは始まりませんから。伺ったご希望をもとに、お客様にとって意味ある住まいを考えるのが私の仕事です」 ――「家づくりって、基礎とか壁の内部とか安全面で重要なことはいろいろありますが、間取りや内装に関してだったらなにが一番大切なんでしょう。つまり、愛着わく家づくりのポイントは?」 ![]() 山田「そうですね、私は肌のふれるところ、体の当たるところを重視しますね」 ――「体の当たるところ?」 (ワダ) ……次回へ続きます ![]()
09/04 11:00 | 山田雄一の空想空間 リビング&ダイニングに長いカウンターと大きな書棚を作り、パソコンを設置。
家族みんなの情報収集の場にしてしまえば、リビング本来の機能が生きてくる。 そんな山田さんの提案を聞いていると、広い空間に家族のそれぞれが、 インターネットやゲーム、趣味の勉強やクラフトを楽しむ姿が想像されます。 その着想のきっかけは、区切らない昔の住まい方だったそうです。 着想のきっかけは、日本的な間取り。 山田「現代の生活スタイルを検証してみて、この<情報収集のリビング>というコンセプトができたわけですが、そのとき同時に思ったのが、区切る住み方って本来、日本人に合わなかったんじゃないか、と。まあ、何事も一概にはいえませんので、ひとつの仮説として」 ――「確かに昔は、日本の間取りにはプライベートがない、といって嫌がられてましたよね。それで子ども部屋が普及したし、部屋を仕切るのもふすまではなく壁とドアが一般的になったし、狭くても廊下を作りたいし」 山田「じゃあそうやって個室を作って、ここの広さは5畳だ、6畳だ、といってもそれを良しとする基準は何だろう?と思えてきて。面積には限りがあります。広い、あるいは適当だと感じるか、狭いと感じるかは、その空間で過ごす時間の充実度とか、空間の活用度に関係すると思います。デッドスペースが多ければ、無駄に広いだけで結局狭く感じてしまう。そうならない間取りを考えていたら、リビングをフルに活用させて、個人のスペースは最低限でいいのではないか、と」 ――「なにかしたいと思ったら、リビングかダイニングで広げていた、なんてこと多いですよね。子どもも小さいうちはお絵かきやドリルをお母さんの目の届くダイニングやリビングでさせるものですしね」 山田「この絵は先ほどの俯瞰図を横から見たところです。右側の人はカウンターテーブルに向かって座っています。例えば子どもさんがパソコンをしているとしましょう。左はキッチンに立つ親御さん。作業しながら子どもさんの様子を見られます」 ![]() カウンターが向かう部分は、壁にせずサッシにして外への視界の抜けを作る。 壁一面から光を取り込めるようにして外界と一体化。 上部に風通しのための小型の窓を作ると便利。 山田「もう一度、俯瞰図を見て下さい。この絵の真ん中がダイニングテーブル、この手前の広い空間がリビングのスペースです。この部分、ラグにソファを置く、洋スタイルもいいですが、床を一段高くして、35cmぐらいですかね――畳敷きにしてもいいですよ」 ![]() リビングスペースを畳敷きにした場合。 畳敷き部分の座卓とダイニングテーブルを一体化して、広い天板のテーブルを作るのも一考。 ――「このほうが、大きな本を広げたり、年賀状制作の作業にも便利そう。畳はごろごろ寝そべる楽しみがありますよね」 山田「段差にちょっと腰掛けられますし、中を収納スペースにしてもいいですよ」 ――「こういうカタチって雑誌やパンフレットでよく見かけますが、自分が何がしたいか、どう過ごしたいかが分かってくると、その意味や良さがぐんと理解できるようになれたように思います」 山田「そこが大事なんです。『〜したい』という気持ちだけで作っても、家は長持ちしませんよ」 (ワダ) ……次回へ続きます ![]()
08/28 14:00 | 山田雄一の空想空間 好みの違いを認め合う、互いの行動を尊重するという『個の時代』、
リビングのあり方も変わるべきでは?と提言する山田さん。 かつての、家族みんなを引き寄せたテレビに変わるもの、 それは、パソコン、DVDといった情報メディア。 それらを全部、ダイニングキッチンまで含めたリビングに 持ち込もうという提案です。 したいことは、みなリビングで。 ――「リビングをテレビ鑑賞ではなく、情報収集の場にするってどういうことですか?」 山田「こういうことです。このスケッチを見てください」 ![]() ダイニングキッチン&リビングに、書棚とパソコンテーブルを設置。 中央のテーブルがダイニング、その上がキッチン。右の壁面は書棚とパソコンを設置したカウンターテーブル。 左の壁面には、上からキッチンキャビネット、リビングキャビネットにテレビ。 手前のスペースは畳敷きにしても。 ![]() 山田「真ん中のテーブルはダイニング、その上がキッチンです。青いのがシンクでコンロが並んでいます。右の壁の茶色の部分、カウンターテーブルなんです。間に天井までの書棚を入れます。テーブルの前方はガラスサッシとか窓で外が見えるといいですよね。 で、左の壁面はキッチンとリビングのキャビネットを入れて、テレビをここに。手前の空間は畳敷きにしてもいいですね。その場合、ダイニングテーブルをもっと長くして、座卓も作るとか」 ――「なんか、ネットカフェみたい?お母さんがキッチンに立ってて、お父さんはテレビを観てるとか、本を読む、子どもはパソコンでインターネット」 山田「子どもがゲーム、お父さんがインターネットが多いかも(笑)。お母さんの趣味の手芸やクラフトもここに場所を作ればいい。それで、このカウンターで親子で勉強もしちゃうんですよ。ネットで調べ物もすぐできる」 ――「ああ、成績優秀な子どものほとんどは、リビングで勉強してたっていうハナシもありますね。それに子どもがどんなサイト見てるか、親は家事をしながら見られますね」 山田「ここに書棚を作ったのも、子どもって親の本の背表紙見て育つ部分ってあるなあと思ってのことです。DVDもCDもこの空間に収納すればいいでしょう。タイトルだけでも立派な情報。内容を知らなくとも、なにかしら子どもの志向や情操に影響あるはずです。ですのでここはぜひともオープンにしておきたいですね。まあ、女性の方は扉をつけたいとおっしゃる方が多いですが」 ――「見た目がすっきりしますしね。それにキッチンが近くにあるから、どうしてもニオイとか油汚れが気になりますし」 山田「強力な換気扇とパーテーションで大丈夫と思いますよ。このキッチンの位置は例えばのものです。左の壁面に向いてもいいですし、テーブルと向かい合って作ってもいいですし」 ――「それにしても思い切ったワンルームですよね。くつろぐってユルユル過ごすばかりじゃなくて、何か好きなことをしている、っていうことなんですね。一見受け身のようだけど、ポジティブなくつろぎがここに」 山田「極論ですが、このリビングがあれば個人のスペースは寝室だけでいいかなと思うんです。あとクローゼットと」 ――「かえって日本的かも」 山田「そう、着想のきっかけはそこなんです」 (ワダ) ……次回へ続きます ![]()
08/21 11:40 | 山田雄一の空想空間 家族全員がリビングに集う――。
子どもが成長するにつれて、こんな光景が少なくなってくるようです。 子どもたちは自室で勉強やパソコン、 お父さんやお母さんだってそれぞれに趣味ややりたい勉強があります。 今やテレビはおろか、食事だって家族みながそろうのもめずらしい時代。 そんな現代の生活スタイルに合わせた新しいリビングの提案です。 新しい家を作る計画にわくわくしながらも、 どんな風にすればいいのか正解がわからない。 理想はあれこれあるのだけど、迷うばかりで決められない。 まずはどこから考えたらいいでしょう?と、 住友林業株式会社の設計士さんをお訪ねしました。 お話を伺ったのは、住宅本部奈良支店設計グループ係長の建築士、山田雄一さんです。 ![]() 〈山田雄一〉 1973年生まれ、大阪府出身。関西大学工学部建築学科卒。 趣味は読書と、衣食住に関すること。 基本的に、家を建てるにあたって影響するものにはなんにでも興味があるとのことで、 休日は奥様とインテリアショップをめぐったり、インテリア雑誌はもちろん、ファッション誌など女性誌まで幅広く通読。 「お客様に家を建てるということの喜びを 肌で感じてもらいたいと思って設計しています」。 くつろぐ、ってどういうこと? 山田「今回の企画にあたってまず、リビングを考えてみました。家作りを考えるとき、おそらくみなさんが最初のほうにプランを考える重要な空間ですよね。けれど実際、今のスタイルって家族全員がくつろぐ場所として機能しているかどうか、個人的にはちょっとギモンを感じつつあるんです」 ――「本当にくつろげるかどうかということですか」 山田「と、いうかですね、今の若い世代のご夫婦はその親世代と比べると『個の時間』を大切にする傾向で育ってきてるんですね。それがいいとか悪いとかではありません。時代がそうなのですから。夫婦だからといって同じ価値観を求め合うことはないでしょう。違う部分を無理に合わせることもしないし、合わさせようと無理強いもしない。互いを尊重して違いを認める、理解しようとする。大切なのは、それぞれが自分に必要なものを選択できて、かつ自然な気持ちで共に過ごせること。そんなあり方になってますよね。 と、なると、リビングの中心にテレビとソファを置くというスタイル。これが本当に今の時代のくつろぎに合っているのかなぁ、とふと思いまして」 ――「なるほど〜。デザインはモダンになっても、構造は昔ながらの『茶の間にテレビ』ですね。お父さんか子どもがチャンネルの主導権をとって、家族みんなで鑑賞する、ということが前提の」 山田「そうです。夫婦でも観たい映画は全然違ってたりするでしょう。夫婦でいっしょにソファに並んでDVD観るなんてことって、そんなにあるでしょうかね。それに子どもたちも、親がテレビを観ていたら、自分たちは自室でゲームしたりパソコンに向かってたりすることのほうが多いでしょう」 ――「まあ、バラバラですね。したいことはみんな違うから。家の中でもそれぞれに忙しいし」 山田「だから、考えてたんです。かつてのテレビに変わる、家族を集わせるものはなんだろう?って」 ――「ん〜、何でしょう……やっぱり、食事の時間を頑張って合わせるとか?」 山田「いえいえ、『情報を集める、仕入れる場所』にするんですよ、リビングを」 (ワダ) ……次回へ続きます ![]() |
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