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コミュニケーションを育む二世帯住宅〈4〉
プライベートを保ちながらコミュニケーションを取り持つ、そんな二世帯住宅の間取りが見えてきました。
そのポイントとなる中庭は、本来、暑さ寒さを和らげる『涼温房』構造のためのもの。
迷いの解決策を思いがけない視点から提案され、いっそう頼もしさを感じました。


二世帯住宅にも無理なくワークスペース。
――「二世帯住宅で両親の仕事部屋まで作って、駐車スペースも2台分。依頼は全部クリアされてるようですが、ただ、収納スペースが気になります。世帯が増えると物も多くなります」
森濱「ご両親さまは仕事柄、美術書や旅の思い出の品々が多いのでしたよね。1階の間取り図とスケッチを見て下さい。リビングの壁面を全面収納にしました。資料探しなど、本をたくさん広げることもあるかと思います。そういうとき、アトリエとつながるリビングも利用すれば便利でしょう」

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――「8畳ぐらいの部屋の壁一面が天井まで使えるということは、かなり収納できそうですね」
森濱「仕事部屋にも作りますし」
――「仕事部屋とリビングってドア一つ隔たってるだけで、すぐ隣なんですね。ワークスペースが5畳というのはちょっと狭いなと思っていたのですが、そんなにずっとリビングを使ってるわけじゃないからここも利用すればいいのですね。キッチンに近いのも奥様にとってはなにかと便利そう。ああ、だから仕事部屋とキッチン、ダイニング、リビングが隣接してるんですね」
森濱「物音が気になるならドアを閉めればすみます。リビングで資料を広げているときに来客があれば、奥の和室にお通しすればいいのです」
――「そして寝室は全然見えない……すごい!すべてうまく行きそう」
森濱「話しを戻して収納ですが、ここの土地を見てみたら傾斜があることがわかりました。この地形を利用して半地下の駐車スペースを作り、そこに設けるのも一つの手です。息子さん夫婦もこれから先、子どもができればなにかと物は増えてゆくはず。二世帯ですからそれなりの収納スペースを考えておいたほうがいいかもしれませんね」

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――「それを聞いて安心。二世帯とワークスペースという2つの大きな問題に、期待以上の答えをいただきました」
森濱「親世帯と子世帯、個と公、オンとオフ、ひとつずつ整理してきちんと分けながら、つなげた方がいいところはそうできるようにしておいて、全体をまとめる。家族の気持ちが静かに通じ合う、そんな間取りになればいいですね」〈了〉
(ワダ)

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04/10 11:00 | 森濱秀人の空想住宅 | CM:0 | TB:0
コミュニケーションを育む二世帯住宅〈3〉
親世帯と子世帯とのコミュニケーションにはまだまだ距離がある――そんな関係だからこそ、玄関と中庭が共有になった上下分離型を提案。
中庭は、1階に住む両親と2階で暮らすお嫁さんとの間を取り持つ効果と、家の中を快適に保つ仕掛けがあるのだそうです。


庭の様子が共通の話題に。
森濱「庭作りは住む人の好みですが、例えばこの家なら、藤棚を作って下にテラスを設けたり、外庭には桜など広葉樹を植えるのをおすすめしますね。そしてそれらが2階からも様子がよく見えるようにしておくのです」
――「花が咲いたり、葉っぱが色づいたり、四季の変化が間を取り持つということですか」
森濱「そうです。きれいな花が咲くと誰だって気持ちが華やぐし、春の新緑、夏の青葉、秋には紅葉と、樹木の変化も風情あるものですよね。自然と家族の話題になってゆくのではないでしょうか」
――「世代を超えた共通の話題ですね」

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風を起こして涼を取り込み、熱を蓄えて暖を保つ「涼温房」。
森濱「それともう一つ。アトリエも収納スペースも必要という制約がありながら、わざわざ中庭を設けたもう一つの理由は、『涼温房』効果をもたらすためです」
――「『涼温房』?」
森濱「そうです。住友林業では強制的な冷暖房になるべく頼らず自然の恵みを利用して、夏に涼しさを、冬には温かさを作りだす住まい造りを研究しています。暑さも寒さも解消するのではなく、『和らげる』という発想で対処する暮らし方です」
――「日本の伝統的な木造家屋がそうですね」
森濱「そのため設計時には現地で空気の流れを観察し、気象データを分析します。また、庭造りも涼温房効果の重要な要素で、先に述べた藤棚もそうですし、落葉樹をよくおすすめするのも夏は自然の遮光効果をもたらし、冬には葉が落ちて日差しを室内に取り入れられるという理由からです」
――「なるほど〜、プロの方が進められるものには、やはり理由がきちんとあるのですね。ところで開放感という点でちょっと気になったのが、中庭を囲うこの2部屋ですが……」
森濱「1階のリビングを挟んだ和室と寝室ですね。ここも涼と日差しを取り込めるようにします」
――「そう、中庭が見えるということは、和室と寝室がお互い丸見えになるのかなぁと。この和室は客間としても使えるようにとのことでしたよね」
森濱「リビングは中庭と一体化するような開放感を重視しますが、この2室は独立感のあるように作りますよ」
――「う〜ん、せっかく中庭が見えるのに、それもなんだかもったいない」
森濱「いえいえ、窓に高低差をつけるのですよ。そうすればお互い視線が交わることなく庭の風を楽しめます」
(ワダ)

……次回へ続きます


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04/03 11:00 | 森濱秀人の空想住宅 | CM:0 | TB:0
コミュニケーションを育む二世帯住宅〈2〉
二世帯住宅を建てる場合、親世帯と子世帯、二つの世帯から
意見がでるのですから、懸案事項は多岐に広がりがります。
迷って意見がまとまらないときは、
たくさんの事例を見ているプロのアドバイスを聞いてみましょう。


吹き抜けの玄関と中庭でつなぐ、上下分離型。
――「親御さん夫婦は大阪、息子さん夫婦は結婚以来、東京で暮らしていたところ、息子さんが大阪に転勤になり、奈良に二世帯住宅を建てることになったそうです。ところが二世帯住宅という意見は一致したものの、完全に分けてしまう建て方がいいのか、ある程度共有スペースがあったほうがいいのか、もう最初から迷ってらっしゃいます」
森濱「親御さんの方がご夫婦とも自宅に仕事場をもたれていることもあって、気を使ってらっしゃるそうですね」
――「二軒続きみたいな、縦割りにしたいとおっしゃってます。けど、息子さんは子どもが出来たら簡単に行き来させられるようにしたいし、それに15年、20年先を考えると、もしかしたら介護の問題も出てくるかもしれないと……」
森濱「そうですね。それは大切なポイントですよ。でしたらなおさら将来の心配の前に、今のコミュニケーションを考えておくことも大切と思います。ご両親様と若奥様はこれまでお付き合いが少なかったわけでしょう。そのような場合、私は上下分離型の設計をおすすめしています。ご両親様が家で仕事をされ、若奥様は関西に引っ越してきたらとりあえずは専業主婦ということなので、いっしょに過ごす時間も長い。お互いなにかと気遣うことも多くなるでしょう。ですので水回り、LDKも含め、生活空間は完全に分けておきます」

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――「玄関だけが共有なんですね」
森濱「そうです。玄関ホールを共有スペースにし、吹き抜けの構造でお互いの気配が分かるようにします。呼べばすぐに応えられるので安心できますよね」
――「間取り図を観ると、1階が親世帯で2階が子世帯ということですね」
森濱「間取りは上下階とも基本的に同じですが、1階はご両親の仕事場があるので、LDKのスペースが少し狭くなっています。その分、あえて中庭を設けました。リビングとつながるガーデンスペースです」
――「リビングの狭さを庭で補うということですね」
森濱「それだけではありません。この中庭が、1階のご両親様と2階の若奥様の仲を取り持つ橋渡し的な役目をします」
――「う〜ん、どう取り持つんでしょう?」
(ワダ)

……次回へ続きます


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03/27 12:14 | 森濱秀人の空想住宅 | CM:0 | TB:0
コミュニケーションを育む二世帯住宅〈1〉
暮らし方の違う二つの家族が、一つ屋根の下に暮らす。
相手を想うからこそ、そこにはちょっと工夫が必要です。
ゆっくりと、じっくりと、時間をかけてお互いを分かり合う。
異なる世代を優しくつなぐ、そんな二世帯住宅の相談です。


今回、二世帯住宅のテーマでお願いしたのは、住友林業(株)住宅本部奈良支店 設計グループの一級建築士・森濱秀人さん。
打ち合わせの間中、その内容を次々とスケッチに起こされます。
手が止まっている時間の方が短かったかもしれません。
思っていることが目の前で描かれる様は、まるで魔法のようです。
   
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1956年長崎県生まれ、九州産業大学工学部建築学科卒業。九州、山口エリアで19年間活躍され、奈良支店に着任。5年目を迎えられます。貴重な休日はもっぱら神社仏閣めぐりで過ごすのだそう。創建当時の壮麗な様子に想いを馳せるひとときが楽しく、古の技術やデザインから大いに刺激を受けることもあるそうです。設計のモットーは「気持ちいい家造り」。敬愛する建築家は村野藤吾。

――「今回の依頼家族ですが、このような構成です」
夫(60歳)イラストレーター、妻(53歳)装丁家、長男(30歳)出版社勤務、嫁(27歳)出版社勤務

森濱「なるほど。今は親御さんと息子さん夫婦は別に暮らしているのですね」
――「そうです。ご両親夫婦は大阪市内に、長男夫婦は東京に住んでいますが最近、長男さんの大阪転勤が決まり、これを機会に2世帯住宅を建てて同居することに決めたそうです。長男夫婦はそろそろ子どもが欲しいと考えているので、両親の近くに暮らせて自然環境の良い、しかも大阪市内への通勤にも便利なイーストヒルズ勢野で2世帯住宅を建てようかと言っています」
森濱「お嫁さんは大阪の方ですか?」
――「いえ、東京の方だそうです。東京で知り合って結婚されたと」
森濱「じゃあご両親さんとはあまり深くお付き合いできていないですね」
――「そうらしいです。お互い歩み寄る気持ちはあるけれど、言葉も違うしノリというか生活の呼吸も違う。そんなことを気にしつつも、前向きにコミュニケーションを図っていこうと……」
森濱「分かります、分かります」
――「それで、親御さんのほうの希望ですが、まず、仕事場であるアトリエが必要です。そして仕事柄来客が多く、旅行も多い。長男夫婦とは暮らしのペースが合わないだろうという配慮から、基本的に日々の生活は別にしたい。とはいっても、お互い顔を合わせられる共有スペースは欲しい、と」
森濱「お嫁さんは仕事はどうされるんですか」
――「関西に来るのを機に、退職するそうです。しばらくは奈良の暮らしを楽しみながら、土地勘もつけていこうと」
森濱「じゃあ、長男さんが出勤されているときは、お嫁さんは親御さんといっしょにいる時間が長くなりますね」
――「そうですねぇ、どうなるんでしょうかねぇ……」

縦分割型、上下分割型、LDK共有型など、2世帯住宅のスタイルもさまざま。
自分たちにはどんな形が合うか、それは暮らしてみないと分からないというのが現実ではないでしょうか。
しかしプロはたくさんの事例を見てきています。
経験による豊富な情報の中からさまざまな考え方を提案してくれます。
次回から森濱さんのプレゼンテーションを伺いましょう。
(ワダ)

……次回へ続きます


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03/20 11:00 | 森濱秀人の空想住宅 | CM:0 | TB:0
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